建窯天目における「虹彩」現象の現れたものは 2種類あります。
一つは窯の中で腐食したもので 薪の炎によって起こりますが
人工的に発生させる(コークスや炭とともにさやの中で焼くもの)こともできます。
さや詰め法は 昔から行われており文献でも見かけますし 薪窯(のぼり、穴窯など)でも
行われています。
その必要性の第一は、燃焼燃料薪の灰の付着を防ぐためです。
天目の場合は溶けやすい鉄の多く入った釉薬ですので火前と裏では作品の表と裏に
差異ができてしまうために行う必要がある、ということ。
第二は、窯詰目の効率性です。棚板のなかった時代には効率を考え
詰め方に工夫をしてきましたが、この鞘鉢詰めによる積み重ねて焼く方法は
現代の登り窯にもそのままつながっているほどのもので、千年以上の歴史があります。
「虹彩」現象の原理は釉薬表面を ガスにより腐食させて 傷つける物理的なもので
多くは 釉薬面全体、一様に虹がオーロラのように広がります。
黒釉の建窯陶器以外に実際、窯の中の炎による虹彩は伝世品の片身代わりの「灰被天目」にもありますし、
MIHO MUSEUMの油滴天目の虹彩などはこの原理でしょう。
天目碗の表面が腐食され、層の高さ、で色が変化しています。
これは鞘の中に腐食ガスが侵入し 碗の内外を満たしてその高さに応じ
腐食ガスの濃度などの違いにより表面は腐食を受けたと解せられます。
http://www.miho.or.jp/collectionindex/
私もこの方法も試して見ましたが 国法ように細かな色の変化をつけることはできません。
2次的要因とはなりえても
斑文を発生させ かつ同心円状のグラデーションを伴うものではありません。
(既存発表の作品で 斑文とは無関係に広範囲で虹がかっているものを見かけますが
虹彩条件として私は 斑文発生そして斑文自体との関係性が現れていなければ
「後付けの技法」かと思います。
ましてや斑文内部の虹彩となると、斑紋と別途、後付けの虹彩ということでしょう。
(MIHO MUSEUMの油滴天目の虹彩と同じ油滴発生後の腐食)
本物判別の決め手は 以前も触れたように
「鉄」の光かどうか? 「鉄」は銀や鉛や錫やビスマスとは違います。
(因みに上記の「腐食法」は黒ガラスに傷をつけるものなので 反射光が「薄い」と思われます。 )
そしてふたつ目が 薄膜表面にできる「構造」による「構造色」です。
これは、炉内雰囲気は絶対条件でありながらも、主な原因が黒釉の表面の薄膜のそのまた表面に
規則性のある凹凸ができて、それが光を反射させるときに一定の色を見せるものです。